『バーレスク』『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月』『エノーラ・ホームズの事件簿』『ロマンティックじゃない?』
今回ご案内する4作品の共通項は、「この主人公、どんなにピンチになっても大丈夫」というセーフティーネットが分かりやすく張られている『安心・安全』なサクセスストーリーという点です。
疲れている時ほど、難しいテーマの映画よりは気楽に観れる映画、観ていてハラハラドキドキはいいけど暗いオチは絶対見たくない、目にも心にも優しい作品を選びたいものですよね。
そんな時に是非おすすめするのがこちらの4作品です。
高いポテンシャルを秘めつつ現状うまく行っていない、そんなヒロインが豪快に殻を破って『理想のゴール』へと爆走する、非常に爽快感あふれる作品となっている映画ですので、思いっきり満喫してストレスを吹き飛ばしましょう!
では、早速各作品のあらすじと感想をまとめてみましたので、ご参考にして頂ければ幸いです。(感想にはネタバレが含まれています)
――4作品はNetflixから選びましたが、他の配信サービスで扱っている作品も含みます。配信元はまとめに記載しましたのでご参考にしてみて下さい。――
【目次】
バーレスク
2010年公開 アメリカのミュージカル映画
【監督】スティーブン・アンティン
【出演者】クリスティーナ・アギレラ、シェール、キャム・ギガンデット他
複数のデジタル配信サービスあり
あらすじ
歌唱力とエンターテイメントのセンスに恵まれている主人公のアリは、ほんの少しのお金とあふれんばかりの希望を握りしめてアイオワから単身ロサンゼルスへとやってきます。吸い込まれるように『バーレスク・ラウンジ』の店内へと入ったアリが目にしたのは、言葉を失う程に感性を刺激される圧倒的に華やかなショーの世界でした。
ウエイトレスとしてバーレスクの一員となったアリは、『新しいアイデア』と『周りが注目せずにはいられないほどの熱意』で一躍トップスターへと駆け上がるのですが・・・。
華やかな舞台が繰り広げられる水面下で、裏では資金繰りに苦慮しているバーレスクのオーナーに不動産バイヤーが買収の話を強引に持ち掛けてきます。
遠距離バスの片道切符で生まれ故郷を後にし、今やアリにとっては第二の故郷となったバーレスクの存続の危機が静かに進行しているのでした。
窮地を察したアリは、追い詰められて頑なになってしまったオーナーのテスに『新たなアイデア』を持ち込みます――。
感想
田舎町のカフェ――。
閉店後に一人歌の練習をするアリの力強い歌声が、この物語の根底に流れているテーマのカラーです。
孤独でも、窮地に立たされても、歌い始めた途端にそのか細い身体からは想像もできないようなパワーがほとばしる――。そのギャップが『典型的なサクセスストーリー』として観る側に安心感を与えてくれます。
バーレスクは、セクシーな衣装に身を包んだ美女がこれでもかという位登場します。ですが、映画の中の設定として『お色気ショーの店』という括りにはしないという作り手側の決意を感じさせてくれるので、観ている側が『これはどういう趣旨の作品なのか』というブレを感じずにストーリーに入り込めるような仕上がりになっています。
バーレスクというジャンルで登場人物にストリプティーズ(色気や妖艶さを含んだダンス)としての演出をしなかった事については賛否が分かれるようですが、それがこの映画の『フィクションとしての設定』なのだと思えば気にならないのではないでしょうか。
どんな映画でも、実録(ノンフィクション)ではない作品なのであれば、作り手の思い描く世界観が前提となっているものだと思います。
何者でもなかったアリが『新しいアイデア』で自分を成功へと導き、そしてまた『新しいアイデア』で店の危機を救う――。
その爽快感を単純に、楽しく味わえる映画となっています。
そしてもう一つの心理描写で興味深いのは、店を手放さなければならなくなって追い詰められていくオーナー、テスの再生の過程です。
借金で身動きが取れなくなり苦悩する中、それでも明日のショーの為のリハーサルに挑むテス。
憂鬱なこの気分。必死で耐えている。でも何か力強い物が身体の奥に残っているわ。倒れていても立ち上がる。私を負け犬にしないで。これまでの私はうちひしがれていた。苦しみや悲しみに――。でも乗り越えて見せる。復活してみせるわ。私は終わってない。
人は言うでしょう。私は消えていくと――。でも私は生き残る。誰も止められないわ。
(歌詞の抜粋)
アリの歌声を、『苦労してなかったらあんな歌は歌えない』と評価するテスもまた、自身の苦悩を力に変える才能に恵まれたエンターテイナーとして描かれています。
年代層を問わず、心の琴線に触れるストーリーではないでしょうか。ぜひご覧になってみて下さい。
ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月
2014年公開 イギリス、アメリカのコメディ映画
【監督】ビーバン・キドロン
【出演者】レネー・セルヴィガー、コリン・ファース、ヒュー・グラント他
あらすじ
2001年に公開された『ブリジット・ジョーンズの日記』の続編です。
人権派の弁護士で、誠実でイケメンのマークと相変わらずのラブラブっぷりが絶好調な日々を過ごすブリジット。
ですが、恋に仕事に張り切っていたブリジットに、ある日突然暗雲が立ち込めます。
美人でスタイル抜群なレベッカがマークの家に入っていく所を見たというタレコミ情報が入ってきたのでした。
動揺するあまりに、情報を持ち込んだ女性の性格が悪いということをごっそり念頭から外し、『今すぐ問い詰めろ!』という友人達にけしかけられるままにマークの家に乗り込んだブリジットを待ち受けていたのは・・・。
ホームミーティングをしていたマークの仕事仲間達とのカッコ悪い初対面でした。
それからというもの、次第に彼との間に隙間風が吹きはじめ――。
とうとうブリジットはマークの元から去っていきます。
失意で荒れ、這うように職場にたどり着いたブリジット。そこで待ち構えていたのは、女好きで軽い元彼、ダニエル・クリーヴァ―でした。マークとラブラブだった頃からダニエルは強引にブリジットに絡んできていたのですが、今回はタイへの出張をオファーしてきたのでした。
ようやくジャーナリストらしい仕事が出来ると喜んだブリジットは、ダニエルとの旅行も仕事と割り切りタイへと赴きます。
ですが一仕事終え、明るい気持ちになったのもつかの間、帰りの空港でかつてないほどの災難に見舞われてしまい――。
感想
最初につらつらとあらすじを書いてみましたが、ご一読してくださった方はこれのどこがハッピーな映画なんだと不思議に思われたと思います。ですので、もう少しあらすじを補足してみたいと思います。
恋に仕事に張り切っていたブリジットに、ある日突然暗雲が立ち込めます。
――と、ここまでは暗雲の方からやって来たといえるのですが、その後の散々たる展開についてはブリジットが敢えて暗雲をつかみ取り自分の上にまき散らしていると言っても過言ではないくらい自分から泥沼にダイブしています。
むしろ暗雲の方はサーッとブリジットの上を通り過ぎようとしているのに・・・。
ですがそんなブリジットに、深い愛情をもって傍らに居続けてくれる人権派弁護士でイケメンのマーク。
その設定(太字部分の三点セット)がとんでもなく安定のセーフティーネットとなって、ブリジットがどん底に落ちるのを防ぐだけでなく、奇跡のv字回復を果たしてくれるのです。
映画を観ながらふと思ったのですが、この作品のテイストを一言で表すなら『居酒屋で聞く友人の恋バナ』といったところでしょうか。
“酔った勢いで喋り倒して自分の中の膿を出しきってしまい、ふと我に返ったら話した内容はよく覚えていないがスッキリした気分になっている――。”
もちろん視聴者は聞かされている側ですが。
聞いているこちらは、いや、そんなん一番やったらあかんやつやん・・・この恋終わったな、と内心思うのですが、ブリジットには安心のセーフティーネットがあるので大丈夫!!
何度もどん底にタッチ&ゴーの勢いでv字回復してくるブリジットは、真の恋愛強者なのです。
ブリジットのハッピーエンディングはホッとする、というよりは「あっ、そうなんだ・・・」というようなちょっとした肩すかし感がありますが、「何はともあれおめでとう!」と言いたくもなる明るい映画なので、是非ご覧になってみて下さい。
Netflixでは2作目のみの扱いとなっていたのでこちらの作品をご案内してみました。
エノーラ・ホームズの事件簿
2020年公開 イギリスのミステリ映画
【監督】ハリー・ブラッドビア
【出演者】ミリー・ボビー・ブラウン、ヘンリー・カヴィル、サム・クラフリン 他
Netflixオリジナル映画
あらすじ
エノーラ・ホームズは幼い頃に父を亡くし、二人の兄も家を離れ、母と二人でイギリスの郊外に暮らしていました。革新的な母からは、お裁縫の代わりに武道や化学の実験を教わるなど型破りな教育を受けており、その時間はとても楽しく、エノーラにとってはかけがえのない生活となっていたのですが・・・。
ある日、母親のユードリアが失踪した事から物語は始まります。
エノーラの二人の兄、官僚の長男マイクロフトと私立探偵のシャーロックが母親の失踪を解決すべくやってきますが、エノーラには教育が優先と考えるマイクロフトによって寄宿学校に入れられそうになります。
ユードリアを探したい一心のエノーラは母親が残していった資金を手に、兄達を振り切りロンドンへ向かう列車に乗り込むのでした。
その車中、座席の荷物台に置かれていたバックの中に隠れていた人物、バジルウェザー・デュークスベリー卿と出会います。
バジルウェザーは、イギリスで行われようとしていた改正法案の否決を画策する一派から命を狙われていました。バジルウェザーが賛成派だったため、一派は彼の一票を消そうとしていたのでした。
何故自分の命が狙われているのか分からないまま、バジルウェザーは幾度となく危険に身をさらします。そんな事態を放ってはおけないと考えたエノーラは、犯罪を暴くべく立ち上がるのでした。
感想
ナンシー・スプリンガー原作のミステリ小説「エノーラ・ホームズの事件簿シリーズ」を映画化した作品です。
母親の失踪という暗いスタートですが、エノーラの明るさと無敵感あふれるキャラクターで、次々と敵を倒していくロールプレイングゲームのような高揚感を得られるストーリー展開となっています。
『新しい時代を作るための投票権』という、労働者階級にとっての「希望」を背負った心優しい貴族バジルウェザー。
エノーラは彼の命を救い、無事に投票させる事で時代の流れを変えていきます。
「力で相手をねじ伏せる」のではなく、「力でねじ伏せようとする一派の犯罪を暴く」という方法で国民の権利を勝ち取る――。
難しい題材を扱っていますが、ミステリー作品ならではの手法に落とし込んだストーリー作りが、エンターテイメント作品として観ている者を引き付ける作風に仕上げています。
もちろんエノーラはシャーロック・ホームズの妹。いわばサラブレッドです。探偵としての初仕事に黒星を付けるはずはありません。
エノーラのバックにはあのシャーロック・ホームズが付いている――。こんな頑丈なセーフティーネットが他にあるでしょうか?
是非安心して「ハラハラドキドキ」して下さい。
そして更に、映画を語る上で見逃せないポイントがありますので、そちらを合わせてお楽しみください。
映画の根底に流れているもう一つのテーマ、『家族の絆』です。
家族全員が大人になったホームズ家はそれぞれ別々の人生を歩むけれど、心はしっかりと繋がっている・・・エノーラの心理的な成長も追うことで、ハートウォーミングな作品となっています。
エノーラの圧巻の行動力は、観ているとパワーが貰える気がしてきます。こちらも元気が出る映画となっていますので、是非ご覧になってみて下さい。
ロマンティックじゃない?
2019年公開 アメリカのロマンティック・コメディ映画
【監督】トッド・シュトラウス=シュルソン
【出演者】レベル・ウイルソン、リアム・ヘムズワース、アダム・ディヴァイン他
Netflixによる独占配信
あらすじ
「人生はおとぎ話とは違うんだ。ハッピーエンドなんかない。あるのはビザ目当ての結婚くらいよ」
強烈に冷めた意見を母親から聞かされ成長したナタリーは、恋にも仕事にも自分に自信のない女性となっていました。
親友のホイットニーがドハマりしているラブコメを「社会の害毒」と言い切り、3時間もボロクソに言う筋金入りのロマコメ嫌い。
同僚のジョシュに好意を寄せられていることにも気づかない恋愛音痴なのでした。
ところがある日、ひったくりに襲われ気絶したナタリーが病室で目を覚ますと・・・。
世界は現実と全くかけ離れた、「お花畑の世界」へと激変していたのでした。そう、まるでそれは、ナタリーがあれほど毛嫌いしていたロマンティック・コメディの映画の世界・・・。
おしゃれなブティックのような病院を出て、自宅に帰るまでに幾人もの男性に褒めたたえられ、家に入れば愛犬が超優秀になっている・・・のみならず家ごと全取っ換えしたようなゴージャズぶり。
あれよあれよという間にロマンティックに巻き込まれていくナタリーは、イケメンの彼氏もゲットし、ラブコメ世界にどっぷりとハマるのですが・・・。
感想
文句なしに気楽に笑える映画です。
主演のレベル・ウイルソンは「ピッチ・パーフェクト」、「バチェロレッテ あの子が結婚するなんて」等に出演。どんな逆境も簡単に蹴散らしてくれそうな、パワフルなキャラクターの女優さんです。
台詞だけ聞いているとコンプレックス満載な役どころですが、そのビジュアルから負のオーラは微塵も感じさせないため、終始明るいコメディとして笑える作品となっています。
この映画の最強のセーフティーネットは彼女の力強い演技力といっても過言ではないでしょう。
さて映画の設定ですが、どこまでもロマンティックを追求しているのがむしろマニアックな笑いとなっています。
辟易したナタリーが「ラブコメのあるある」を数え上げ、汚い言葉で罵ろうとするのですが、汚い言葉にはピー音が入るのでロマンティック路線は崩されません。
「いつもの汚いNY」に帰るために奮闘すればするほどロマンティックの毒牙にかかっていくナタリーがとてもコミカルに描かれています。
結末には素敵なハッピーエンドが用意されており、温かい気持ちになれますので是非ご覧になってみて下さい。
まとめ
さて、今回ご案内した4作品はNetflixから選んでみました。「エノーラ・ホームズの事件簿」と「ロマンティックじゃない?」はNetflixオリジナル、独占配信となっています。
「エノーラ・ホームズの事件簿」は2020年公開予定でしたが感染症流行ため劇場公開を断念し、全世界でNetflixオリジナル映画として配信しました。
また、「ロマンティックじゃない?」は2019年公開ですが、日本では劇場公開されませんでした。現在Netflixで独占配信が行われています。
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