【映画レビュー】「マリーゴールドホテルで会いましょう」  いくつになっても人は躓き迷い・・・でも、だからこそ人生は面白い!

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出典元:movie.jorudan.co.jp/

人生を変えてみよう・・・、と思うことはあってもなかなか行動に移せないとお悩みの方、目から鱗の映画です。

 思ったとたん猛スピードで行動に移すイギリスの7人の老人たち。彼らが行った先々で巻き起こる出来事を通して、観ている側も『色々な人生』を疑似体験できる、とても素敵なストーリーです。

 この映画は、初老の域に入った登場人物たちが織りなす『黄昏』群像ドラマなのですが、根底にあるテーマはむしろ普遍的で、どんな年代層の方にも共感を得やすいエピソードやセリフが随所にちりばめられています。

『あ、前にこんな気持ちになったことある・・・』

 ほんのちょっとした経験、その時感じたこと、若い人も年齢を重ねた人も、どこか懐かしいような、それはまるでマジックアワーのように誰もが思わず足を止めて見入ってしまう、そんな時間が流れる映画なのです。

舞台となるのはエネルギッシュでカオスなインド――。

物語は、イギリスのリタイア組7人が、右も左も文化も風習も何もかも分からないインドに突然やってくることから始まります。

引用元:eiga.com

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【あらすじ】

『あなたの晩年を輝かせるにふさわしいインドの宮殿。イギリス式のマナーであなたをお迎えいたします』

そんな美辞麗句と美しい写真を載せた、滞在型ホテルの広告に魅了された7人のイギリス人は、それまでの暮らしに見切りをつけ、ホテルのあるインド、ジャイプールへとやってきました。

未亡人のイヴリン、元判事のグレアム、定年後に格安の老人ホームを目指してインドにやって来たダグラスとジーン夫婦。徹底した人種差別でインド人をこき下ろすミュリエル。まだまだ現役という気持ちから、もう一花咲かせたいノーマンと、離婚再婚を繰り返しながらも次の結婚を夢見るマッジ。

偶然空港で鉢合わせた7人は、予定していた飛行機が飛ばなくなったというアクシデントに見舞われ、バスやトゥクトゥクを乗り継いでホテルに向かうべくインドの雑踏に降り立ちます。

とんでもなく多い人口、無法地帯とも思えるような道路事情――。

出典元:movie.jorudan.co.jp/

一同は早速異文化の洗礼を受け、驚かされながらもホテルへと向かいます。

苦労して辿り着いた『パレスのような』はずのホテルは、なぜか写真とは似ても似つかない、屋根だけが辛うじてあるような廃墟同然の建物でした。オーナーは青年実業家のソニーですが、父親から相続したボロボロのホテルを、予算がないためほとんど修理もせず集客し、更にはなんとか取り繕って一同をつなぎとめようと画策します。

もちろんみな戸惑い、ソニーと衝突もしますが――イギリス人達の過去が紐解かれ、それぞれが過去の自分とは決別し、一歩前に踏み出していくたびに、ソニーとの関係にも変化が生じていきます。

老人達の再生の過程とオンボロホテルの再生の過程が、物語の最後に優しいタッチでリンクし――なぜ舞台がオンボロのホテルでなければならなかったのか、見る側にも伝わってくるようになります。

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【登場人物】

●イヴリン

心臓発作で夫を亡くし、事業の借金を返済すべく家を売ったイヴリン。息子との同居話を断り、自分の力で生活していく決心をしたイヴリンは、ホテルの広告を見て単身インドへとやってきます。怯えながらも好奇心を持って新天地で生きる女性を、ジュディ・デンチが魅力的に演じています。物語はイヴリンのモノローグで進行していきます。

●グレアム

自身の体調の異変を感じ取り、職を引退してかつて住んでいたインドへと居を移す事に決めたグレアム。インドに着くやいなやかつての恋人を探し始めます。演じているのはトム・ウイルキンソン。『愛すべき第二の故郷インド』を魅力的に表現しています。

●ダグラスとジーン夫妻

定年退職した後イギリスで終の住処を探していたダグラスとジーン夫妻。娘の新規事業に出資したため資金不足に陥り、安価な老人ホームを探してインドへとやってきます。内向的ですが温かみのあるダグラスを演じているのはビル・ナイ。ジーンを演じたのはペネロープ・ウイルトン。現実の辛さを受け入れられずに苦しんでいたかに思えたジーンを、最後にしっかりと地面に着地させました。

●ミュリエル

腰を痛め担ぎこまれた先の病院で、医師から「手術は半年待ち」と告げられます。「この年でそんなに待てないわ。青いバナナも買わないのに」。すぐに手術を受けられる病院を紹介すると言われ、嫌々インドにやって来ます。最初はインドの何もかも受け付けなかった頑固な女性でしたが、次第に心開いていく様を、マギー・スミスがどこか可愛らしく演じています。

●ノーマン

「自分はまだ現役だ」と、燃えるような恋を求めてお見合いパーティーにいそしんでいましたが、結果はおもわしくありませんでした。心機一転、新たな出会いを求めてインドへとやってきます。最初はインドでもうまくいかないんじゃないかと思わせておいて、ころっと大逆転を果たす『粋なおじいさん』を、ロナルド・ピックアップが軽妙に演じています。

●マッジ

鏡に映る自分はまだ美しい――離婚再婚を繰り返してはいましたが、マッジはまだ将来の相手を探すことを諦めていませんでした。ある時、娘夫婦から子守りを頼まれたことをきっかけに、衝動的にインドへと旅立ちます。行動はハチャメチャですが、ソニーの恋愛トラブルに「面白くなってきた!」と興味深々になったり、ノーマンの恋路をアシストしたり、どこか愛すべきキャラをセリア・イムリ―がチャーミングに演じています。

引用元:cinema.ne.jp

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【感想】

 この映画の一番の魅力は登場人物たちの『名言』の数々です。心にしみる、という一行では表しきれないほど〝ささる〟ので、ご覧の際は是非メモのご用意を。

 まず、冒頭からその予兆のようなものは感じさせてくれるのですが、最後までその期待は裏切られることなく時にセリフとして、時にモノローグとして〝ささる言葉〟で私たちに語り掛けてきます。

 映画の冒頭に、ぎゅうぎゅう詰めのバスに乗り込むシーンがあります。

子供の頃にインドで暮らしていたというグレアムが先導してみんなをバスに乗せるのですが、早速マッジが悲鳴を挙げます。

「・・だけどこのバス、乗るスペースがない!」するとグレアムは力強くマッジをバスに誘導します。

「インドのルール!“常にスペースはある”!」

この一言がホイッスルとなって、7人は異文化の荒波へと放り込まれるのですが、もまれながらも『自分が思い描く人生』へと果敢に漕ぎ出していきます。

これまでの常識やルールとは全く違う世界で、ゆっくりと、でもしっかりと変わっていく老齢の7人を見ていると、いくつになっても『まだ途中』なんだろうと、観ているこちらも希望が湧いてきます。

ホテルの若きオーナーであるインド人の青年が表現するエネルギッシュな『動』と、黄昏を迎えたイギリス人の主人公たちが表現する『静』――時にぶつかり、時に寄り添い、つかず離れずの距離を保ちながらいつしか登場人物は互いに影響しあうようになっていきます。

――まだ良くないと思うのであれば、それは終わりではない。

  何事も最後には良くなるのだから。

イギリス人を引き留めるためにソニーが引用したインドのことわざです。

人生の岐路のようなものにさしかかった時、さてどうしよう、と立ち止まってしまったら――。この映画を是非お勧めします。

今は答えが出せなくても、その時になれば分かる――。肩の力を抜いて、何ならちょっとお茶でもして、一旦落ち着いて考えてみよう・・・。

映画の中のイギリス人達がそんな風に語り掛けてくれているようで、なんだかポジティブな気持ちにさせてくれる作品なのです。

この作品にはパート2も出ています。よりパワーアップした次作も是非お勧めです。

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