駿河湾を一望できる、とても雰囲気の良い温泉宿が伊豆にあり、時々ドライブがてら立ち寄ります。温泉好きにはたまらない絶景の露天風呂にハマり何度も通ってしまっているのですが、その道程にある、可愛らしい外観のドイツソーセージのお店がいつも気になっていました。熱海から伊豆に向かう途中で通る、函南町へ抜ける熱函道路の中程にそのお店はあります。
尖った切妻屋根に白い窓枠、緑の雨戸がドイツらしい雰囲気の建物です。外壁には童話の世界をモチーフにした絵が描かれており、一見してグリム童話の世界を彷彿とさせる、そのお店の名前は『Grimm』。
遊び心をくすぐられる店構えにいつも目を奪われていましたが、なぜかいつも素通りしていました。ところが先月、いつも立ち寄るパン屋さんにお目当てのパンが売り切れていたことから、たまには他のお店に寄ってみようという事になり、初めてそのソーセージ屋さんに入ってみることにしたのでした。
ダークブラウンのウッディな造りの店内はさほど広くはないのですが、ドイツ製と思われるおもちゃなども展示され、ゆったりとした空気が流れています。ソーセージやハムが並んでいるショーケースには、いくつもの『金賞』や『銀賞』、『銅賞』の文字。
ドイツで修業をされたというご経験を持つ店主の手作りのハムやソーセージが、2000年ドイツ加工食肉国際コンテストで出品した17品全て受賞したとのこと、ドイツソーセージを忠実に再現しているのが魅力です。
本場の味と言われれば、やはり味を確かめずにはいられません。
どれがどんな特徴のモノなのか分からないので、とりあえず目についた5品を購入してきました。
写真左上の白い包みはレバーペーストです。牛バラにレバー30%混ぜてあるそうです。
右上は、すみません。手作りソーセージとは全く関係ないのですが、イタリア製のトマトベースの瓶詰め『CLASのブルスケッタ』です。これは手書きのポップの文言に惹かれて購入しました。ひき肉と炒めてバンズに挟み、ハンバーガーにすると美味しいそうです。
中央左の5本入りの白いソーセージは、『ドイツウインナ(金賞)』。豚と牛の合挽で造った絹挽きソーセージです。
中央右の赤いソーセージは『ケーゼブルスト(金賞)』。ゴーダチーズを粒でいれた、粗挽きソーセージです。
一番下の3本入りの白いソーセージは、『フランクフルタ(金賞)』。オールポークで造る絹挽きソーセージです。
まず、白いソーセージのフランクフルタとドイツウインナですが、どちらも絹挽きというだけあり、とろけるような食感が特徴です。ドイツでは白ソーセージは皮をむいて中身だけを食べるそうで、確かに中身のなめらかな口当たりに対して皮が厚く硬いため、皮ごと食べるとせっかくの食感が半減してしまうような気もします。
ただ、皮のパリっとした食感が好きという方には、皮の硬さがまた食べ応えあると思われるかもしれません。ナイフで縦に切り込みをいれ、皮と中身を切り離して食べる、あるいは端をカットして中身を吸い出すのがドイツでの正しい食べ方、という知識さえ持っていれば、ご自宅で召し上がる分にはどちらでもいいのでは、と私は思います。ちなみにドイツで皮ごと白ソーセージを食べる方はいらっしゃらないとのことです。もしドイツの方とお食事する機会がありましたら、郷に行っては郷に従え、の方が無難でしょう。
ゴーダチーズが入っている赤ソーセージのケーゼブルストですが、こちらは弾力のある噛み応えです。粗挽き肉の味が強く、ゴーダチーズに負けない風味なので、濃い味のお料理と相性が合いそうです。
今回購入したソーセージは全てボイルが美味しいタイプのソーセージです。お店から頂いた説明書きによりますと、焼いた方が美味しいソーセージとボイルした方が美味しいソーセージがあるとのことで、次回は焼いて食べるソーセージを購入しようと思います。
ソーセージの美味しい温め方も記載されていましたので、ご紹介したいと思います。
ボイルの場合
たっぷりのお湯を鍋に沸かし沸騰したら火を止めソーセージを入れて5~6分温めます。(ぐらぐらと煮てしまうとソーセージの皮が破れてうまみが逃げてしまうからだと思います)
焼く場合
網焼きかオーブントースタ―にアルミ箔を敷いて焼く。フライパンの場合は油は引かずに焼く、とのことです。(皮に切れ目は入れない方がうまみが逃げずに美味しいようです)
さて、次にご紹介するのはこちら。今回特に買ってよかったと思ったのが、レバーペーストです。
レバーペーストは好みが分かれるところで、好きな方にはたまらない美味しさなのですが、私は美味しいと思える場合もある、というのが正直なところです。
日本製のものは、たぶん日本人向けに作っているのでしょう。うまみのような味が加わっており、それが私には雑味として感じてしまい、どうにも好きになれません。
ですので、最近では全く買わなくなっていたのですが、こちらのレバーペーストは、本当に雑味がない、素朴な味わいでした。昔、メーカー名を見ずに偶然買ってとても美味しいと感動した一品に限りなく近い味でした。
また食べたいと思えるレバーペーストを発見出来て、本当によかったです。
レバーペーストは何と言っても、その手軽さが魅力です。ジャム感覚でパンに『塗るハム』とでもいいましょうか。
瓶に詰めておくだけで、煮たり焼いたり切り分けたりという手間が一切かかりません。食卓に並べるだけです。なのに本格ハムの味。ブルスケッタと交互に食べるのがまた美味しいです。
最後に、瓶詰のブルスケッタのご紹介です。
お店に置いてあったのは、『CLAS GRILLED VEJITABLE BRUSCHETTA』です。
CLASのブルスケッタはアマゾン等でも購入できます。3種類あり、グリルドベジタブルブルスケッタのほかにはトマトブルスケッタ、グリーンオリーブブルスケッタがあります。
お店で購入したグリルドベジタブルの蓋がブルーなので、後日そのつもりでネット注文したら、ブルーの蓋のトマトブルスケッタが届きました。ネットでご購入の際はご注意下さい。
ですが、どちらも美味しいのでお勧めです。
ブルスケッタはイタリアの軽食の一つで、軽く焼いたバゲットにお野菜やチーズなどを乗せた『おつまみ』のような料理です。ですので、わざわざ缶詰を買わなくても、ご家庭にある材料ですぐ作れます。例えば我が家では、トマトの角切りとすりおろしたニンニク、気分でピザ用チーズをのせてオリーブオイルをかけ、トースターで焼いたりと、手軽な材料で作っています。(熱源にオイルやチーズがかからないようにアルミ箔に乗せる等、気を付けて下さい)
溶けるチーズを乗せない時はパンを焼いてから材料を乗せています。溶けるチーズ以外にも、クリームチーズやカッテージチーズ(カロリーが低いチーズです)、サワークリームなどでも。
要するになんでもいいのですが、たぶんご家庭で意識せずに作っている類のモノなので、需要が低いのか、瓶詰はあまりスーパーなどでは見かけません。
お店で最初にこちらの瓶が目に入った時はスルーしようとしたのですが、ふと手書きのポップを読んで、気が変わりました。
『ひき肉と一緒に炒めてハンバーガーにしても美味しいです』・・・ぜひやってみましょう。
ひき肉と炒めただけでは、バンズの間からぽろっと落ちて食べにくいかもしれないと思い、ハンバーグの形状にして挟んでみました。
・・・ありです!瓶詰一つで他の味付けはいりません。お肉に味が付いた状態ですので、あとは野菜を乗せて終了です。まさにファーストフードですね。
ハンバーグの種はオーソドックスな造り方をしています。
★★★★★★★★レシピ★★★★★★★★★
牛豚あいびき肉・・・・250g
玉ねぎのみじん切り・・1/2個分(100g)
バター・・・・・・・・10g
パン粉・・・・・・・・1/2カップ(200ccのカップで100ccのライン位まで)
ブルスケッタ一瓶・・・トマトかグリルドベジタブル。
①みじん切りにした玉ねぎとバターを耐熱容器にいれ、蓋はせずレンジで2分半~3分。
よくさましておきます。
②ボールなどにブルスケッタとパン粉を入れて軽く混ぜ、パン粉をふやかしておきます。暫くして出て来た余分な油はキッチンペーパーなどで吸い取らせます。
③別に用意したボールでひき肉をこね、さました玉ねぎとパン粉の入ったブルスケッタを混ぜ、4つの種に分けます。
ひき肉をこねる時は、なるべく体温で種が温まってしまわないよう、ゴムへらを使ったりゴム手袋をして手早くこねます。
ブルスケッタの油分が多くてキレイに俵の形になりにくいですが、パンにはさんでしまうので、あえて気にせずにプライパンに並べてしまいましょう。
④プライパンに薄く油を引き、高さが2センチ以下になるように種を抑えながら並べたら、中弱火で両面3分づつ焼きます。最初に焼いた面をさらに1分以上焼いて、しっかり焦げ目がついたらもう一度裏返し、弱火にします。アルミ箔で種を包み込むように蓋をします。蓋をして数十秒経ち、アルミ箔の中が温まった頃火を止め、2分、そのままにしておきます。
種が柔らかいので、裏返しする時は片手にフライ返し、片手に木べらを持ってそっと返しました。
種の高さを2センチ以内にすればこれで火は通ると思いますが、念のため中まで火が通ったか確認してください。
パンにはさんでハンバーガーにする場合、確かにひき肉とブルスケッタを炒め合わせたバージョンも美味しいです。写真のハンバーガーは、フリルレタスとみじん切りのレッドオニオンを挟んでいます。玉ねぎは新玉ねぎかレッドオニオンが、辛みがないのでお勧めです。
ですが、ハンバーグとして食べる場合でしたら普通のハンバーグを作って、上にかけるソースとしてブルスケッタを使う方が美味しいと思います。
ブルスケッタはパスタソースとしても使えるので、保存食として便利です。
いつもは通りすがりに眺めていたソーセージのお店でしたが、今回立ち寄ったのは大正解でした。特に白ソーセージはお勧めです。ちょっと日本のメーカーのものでは味わえない、まさにドイツの味です。
もちろん日本のメーカーのソーセージも美味しいんですけど。
ドイツはけして肥沃な土地ではなく、農作に苦労をした歴史があるそうです。越冬するために欠かせない生命線としての保存食がソーセージでしたので、発達もめざましかったのでしょう。
ヨーロッパの中世を舞台にした17世紀頃の文学に、貴族の食事のシーンが頻繁に出てくるのですが、その食卓に並ぶのはトリの丸焼きだったと記憶しています。トリは空を飛ぶので高貴な食べ物、対して豚は地を這うので庶民の食べ物、という位置付けだったようです。
庶民の食文化として発達したソーセージ、やはり親しみの湧く味ではないでしょうか。